ミツバチは花が咲いて蜜が採れ出すと、新しい巣を巣板の下や、巣箱内のすきまにどんどん作ってしまうのです。それを整理するために取り除いたものや、採蜜の時に切り取った蜜ぶた(巣穴のふた)などを精製して蜜ろうのかたまりにします。一箱あたり年間で500g位しか採れないので、同業者からも買い入れています。
この蜜ろうはさまざまな用途に使われています。薬や化粧品、鋳造の型材、お菓子、靴墨、各種ワックス、クレヨン、ろうけつ染めの材料など。あげればきりがありません。私は、ろうそくを作ってはんばいしてますが、油煙は出ず、いやな匂いもなく、落ち着いた優しい光が特長です。
お話 : 安藤竜二さん(立木、蜜ろうそく製造業)
となりの佐藤さんのばあちゃんは、蜜ろうとなにか混ぜてやけどの薬作るんだっけ。二週間もかけて作る。昔、大谷の板垣医者で看護婦していた人だから。できあがると、部落のみんなさ配るんだ。切り傷にもいいし、みんなで喜んで使っている。
お話 : 菅井弘吉さん(和合平)
蜜ろうを使って接ぎ木する。接ぎ木する穂木の先さ塗るんだ。穂木の先の切り口から水分が抜けて乾燥すねようにすんなだ。普通のろうだとお天とう様の熱で溶けてなくなってしまうけども、蜜ろうだと、溶ける温度が高いから、大丈夫だもね。最近は、ビニール袋をかけるようになったけど、焼けないように管理しなければならないのでやっかいなんだ。
お話 : 遠藤 理さん(栗木沢)
蜜ろうは戦中、弾薬の密閉に使ったんだ。砂糖不足の時だけれども、ミツバチ用に配給があって、その代わりに蜜ろう何キロ出荷しろなどと要請があったんだ。普通のろうみたいにカンカンに硬くなく、柔らかいからね。ひびが入って火薬が湿気らないようにしたんだべ。
今は、登山客の人が靴に塗るんだと言って買いに来るね。
お話 : 多田光義さん(太郎、養蜂業)
取材 : 平成7年
2009.04.20:朝日町エコミュージアム協会