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大谷風神祭の露店

2014/08/18 06:30/大谷風神祭の露店
露店について
                   お話 白田都一郎さん

■90年以上続く松谷屋の露店

 松谷屋は、大正11年の帳簿を見たことがあるので、9年か10年頃に両親が結婚した時に始めたのだと思う。風祭りで店の前に露店出すようになったのも、その時からだから90年以上経つね。
 うちでは毎年、玉こんにゃくと饅頭を売っている。玉こんにゃくは、いい匂いするから買ってもらえる。みそ饅頭や笹饅頭は、風祭りを見に来た人達のみやげとして買ってもらえるんだ。風祭りの日は、人手が足りないから朝早くから手伝いを頼むがった。今でもうちの親戚は手伝って行くけど「招待されたんだか、手伝いに来させられたんだか分からね」なんて言っていくなー。(笑)
 天気は心配だね。天気悪いと人が出なくて売れなくなるからね。昔に一度、饅頭がたくさん売れ残ってしまって、栗木沢とか売り歩いたことがあったな。

■戦前戦後の露店

 昔は、店の前の通りに露店が並んで賑やかだった。白田栄一さんの角から今の白田米屋さんまで並ぶんだっけ。でも、戦前はせいぜい十店くらいだったな。賑やかになってきたのは戦後だね。
 戦争の前後頃で、特に印象に残っているのは、寒河江から来る「だるませともの屋」だったな。お祭りの次の日も店出すっけね。せとものは、当時の経済状況からしても、おいそれと買えないものだったから、魅力あったんだべな。
 おもちゃ屋も人気だった。子供が多かったから売れたんだべ。なにしろ、当時の大谷小学校は600人位いた。おれの同級生も男女合わせて90人位いたったけからね。
 当時は、今みたいな「たこ焼き」とか「焼きそば」とかの食べ物屋はなかったね。金魚屋も植木屋もなくて、簡単な店ばっかりだった。
 戦争の時は、俺は海軍の兵隊になった。舞鶴で主計兵として三ケ月教育を受けて鹿児島へ行った。主計兵は事務担当と調理担当と2つに分かれていたけど、俺は兵隊達に料理を作るほうだった。お菓子屋出身だったからだべな。
 昭和20年の終戦後は、すぐに帰って来れたけれど、砂糖とかの原料がなんにもなかったからお菓子は作れなかった。少ししてアメリカの放出品の砂糖が配給になったので、農家を回って少しずつ砂糖を売ってもらって飴類を作ったね。少しずついろんな材料を買えるようになったのは昭和23年頃だな。風祭りで露店を出せるようになったのはいつだったかな。うちは田圃も畑もなかったから、仕事なくて東京に2年位、働きに行っていたからはっきり覚えていないな。

■現在の露店

 露店が今みたいにたくさん出るようになったのは、昭和30年代からだな。露店商の人に、「大谷の風祭りはとにかく売れるから人気あるんだ」と聞いたことがある。このあたりの夜祭りでは一番売れるらしいね。
 子供たちにとっては、露店とお祭りは一緒だもね。夕方露店が出ていると「お祭りしったけはー」というのが子どもらの昔からの言葉だ。露店とお祭りは付きものなんだよね。
 以前は、露店の場所割りを露天商の中に親方みたいな人がいて仕切るんだっけな。集めた場銭の一部をお祭りに寄付ということで持ってくるものだった。15年位前、不公平にならないようにとのことか商工会でするようになった。
 昭和58年頃に、浮島線の大きな道路ができたのだけれど、その何年か後に、露店の場所が田中屋さんのほうに移ったんだ。きっと理由はバスの関係だったと思う。バスも大きくなったからね。それで、きっとこちらの通りは寂しくなるだろうし、みんなと同じようにさんなねと思って、一度だけそっちで店を出したことがあったけ。ところがあんまり売れなかったので、それからは、また自分の店の前で出すようになったんだ。変わらず賑やかで売れたっけ。
 みそ饅頭は、うちの名物にしたいと思って本格的に作ったのが昭和45年だった。「これはうまい」と思ってもらえるように、その日に作ったものしか売らない方針にしてきた。おかげさまでよその町からも買いに来てくれる。ありがたいことだね。 
 暴れお神楽(獅子)が来ると、饅頭のパックを口の所さ持って行くんだ。すると、中にいる人は口をぱかっと開けて手を出して持ってく。見ている人達が面白おかしくて大笑いする。それも一つの「笑わせ」「お客様喜ばせ」だね。大抵毎年やるようになったな。

(取材/平成26年3月)

白田都一郎(しらた・といちろう)さん
大正13年3月生まれ 91歳 松谷屋菓子店の二代目当主。

大谷の風神祭
小径第15集『大谷風神祭』

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